地域医療の観点からみた医育大学におけるIR

滋慶医療科学大学院大学 武田ゼミ
(会期)2017年12月2日 (開催場所)大阪府大阪市 滋慶医療科学大学院大学
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どのような切り口で述べると興味深い話になるか考えたのですが、私がIRに関わるとベンダー側は思いもしない所属ですので、過程を追って話をした方が面白いだろうと思い構成しました。
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1.IRとは

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IRという用語を初めて聞いた時からしばらくは、産業界など他分野で用いられている手法を大学に持ってきたものだと思っていました。
企業のものは明確ですが、一方大学のものに関しては多様な面があります。引用した大学のIRに相当する日本語はBetweenによるアンケートの結果から抜粋したものです

IRを教学に活用するための課題は?−特集 教育の質保証に向けたIR(Between2009年冬号(株)進研アド)
http://berd.benesse.jp/berd/center/open/dai/between/2009/01/01toku_26.html
結局のところ、企業と大学のIRは似て非なるものというのが最初の印象ではあったものの、非て似るものと思ったりしています。
結局情報を可視化していくことというのは一緒で、内にこもらず外を意識するというところが大事と思っています。

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情報通信技術の活用による 効果的な学修環境の構築について より)
学修環境を整えようとなるべく授業資料はWebで配信しているのですが、外を意識することになり程よいプレッシャーになっております
地域医療においても「意識すること」が地域を繋げて皆が納得する医療環境の実現のキーワードと捉えています

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認証評価に関するところでは大学人として貴重な経験をしましたが、その話は会の後に
三巡目のパワーワードは「内部質保証」と捉えています。

あとは、「ビッグデータ」や「AI」など、どちらかというと確たるデータを丁寧に解釈するというよりともかくデータを集めて数さえ多ければ多少の誤差はものともしないことから、集めて放り込めば夢をみれるような機運が盛り上がりを見せているようにも思います。
しかしながら「GIGO」(Garbage In Garbage Out)ですから、無目的なゴミデータは宝になりません。目的を持って宝を取るときにノイズが混じってしまうものである場合、量の多さでノイズをキャンセルできる可能性を秘めているという話です

「認証評価制度の充実に向けて」(審議まとめ)(平成28年3月18日 中央教育審議会大学分科会)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/03/25/1368868_01.pdf
【具体的な改善事項】 (1)全学的な改革サイクルを確立するとともに大学教育の質的転換を推進するための 評価の在り方(評価方法の改善)より抜粋

適切な大学のガバナンスを働かせるためには,定期的に大学自らの置かれている客観的な状況について調査研究を行い,学内情報の集約と分析結果に基づき,改善を行うことが必要である。このため,大学における自己点検・評価の段階から客観的なデータや指標を積極的に活用するとともに,認証評価機関においても,大学や社会に対して情報をより分かりやすく発信していく観点から可能な範囲で定量的な評価に取り組むとともに必要なエビデンスの収集の強化に取り組むことが望まれる。

教育の内部質保証に関するガイドライン(平成29年3月31日 大学改革支援・学位授与機構 質保証システムの現状と将来像に関する研究会)
http://www.niad.ac.jp/n_shuppan/project/__icsFiles/afieldfile/2017/06/08/guideline.pdf
U 内部質保証システムを構成する各要素の説明 1.教育の内部質保証に関する方針と体制 1-4 情報収集や分析の体制解説より抜粋

教育プログラム等の質保証を効率的に実施するには(中略)インスティテューショナル・リサーチ(IR)活動を実施する体制を有していることが望ましい。
教育の質保証においては(中略)個々の教員がそのような調査を独自に行うことは非効率であるとともに、比較対象がなく解釈が難しい。そのために、IR 活動を実施する体制が適切に構築されていることが望ましい。

2.地域医療とIR

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医育機関は現時点(2017年12月2日)82機関
専門性の獲得の話と広く診ることが対立軸になっているように思われますが、実際には専門性を獲得することで広い視野の獲得を可能にすると考えています。
問題は両者が排他的な関係であると当事者が考えてしまうことであって、その広い視野を獲得しない限りいずれ専門性の深度も深めにくくなるであろうと考えています。
両者のバランスを取りながら広く深くと相乗効果を狙うことが最善と考えておりますが、そのような教育が医育機関に求められていると理解しています。

医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)の公表について(厚生労働省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/033-2/toushin/1383962.htm

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奈良県立医科大学は県と協議して中期計画を策定しています
特に地域医療に関わるところとして「地域貢献」「教育」に関して項目を記しておきました
評価指標が定められていますが、単にその指標をクリアしただけで十分な実効性が得られているかどうかは別の話です。
キチンと組織が目的を達成できるのか考えながら運営していくことで、結果的に指標がクリアできていると考え取り組んでいます。
この部分が量的な指標のみで質保証が可能かどうかという議論の本質かもしれません。
業務に関する情報 第二期(平成25〜30年度)(奈良県立医科大学)
http://www.naramed-u.ac.jp/university/gaiyo/kekaku-hyoka/gyomujoho2.html
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私の役割は下にある水色の括りで奈良県の医師の適正配置に関するところが関心領域ですが、医療提供体制の話にも関与しないと全体像が見えてきません。
一方では医師の適正配置には人材(人的資源)そのものの話も重要で、特に奈良県の場合は奈良医大の役割が大きいところです。そちらの方から大学の教育に関わるところにアプローチする格好で入ってきました
そこで学内の教務システムなどからデータ抽出し分析するようになりましたが、それまでも教務と異なる格好で仕事を一緒にしておりましたし、医療情報分野の人間でもありますので教務システムに関しても少しずつ関わるようになっています
つまり、大学IRに携わることありきではなく、自身に課せられている課題の解決するにあたって辿り着いた格好になっております

3.分析するにあたって

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特別なシステムが導入されていない状態で、現状の教務及び各関係部署からのデータをかき集めて分析したのですが実際に苦労したところとしては、こんなところです
目的としては、医師の地域偏在(都道府県単位)に関するところの医育機関側が保有するデータから関係性が見いだせないかというところです
教務システムのデータで何とかなると甘い見通しで取り組み始めたのですが・・・


以下は実際に分析を始めるときに関係者(メンバーは医学部長をはじめとして・・・)と打ち合わせする際に私が提出した資料です。
なお、資料ですが一部割愛およびマスキングして載せています。
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分析する前(しかもデータを集める前)の段階で私自身が勝手に考えた構想にしては、なかなかいい線行っていたなと自画自賛しております。
話が最初に出たのが4月中旬でしたが7月末にデータをまとめました。
人海戦術での対応で、入試枠×出身地域×初期臨床 の関係をまとめました。
在学中の成績なども分析しましたが卒後の進路(地域)に関するところの特徴は出てきませんでした

手さぐりながら目的を明確にした分析で時間的な制約もあり、力技を使って強引にまとめたので、一品ものになってしまいました。
システム化していく必要性を感じているものの、DWH構築もかなりリソースを必要とするのでそちらの作業を進める前段階で、リサーチを進めつつ構想中という段階です。
現時点での私の認識は、世の中のIRシステムを見るとデータの統合と分析ということでどれだけ人的コストを掛けずに出来るかというところで、特別なシステムではないというところです。
分析にあたってBIツールを使うのかエクセルを使うのかSPSSを使うのかなど、だれがどのような分析をして活用するかによってシステム構成はかなり変わるように思います
<システム例>
大学IR(文教 大学向けソリューション)(富士通)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/education/campus/management/index.html

補足・後書

私以外の先生の話も含め全体を通じてですが、IR(インスティテューショナル・リサーチ)もAL(アクティブ・ラーニング)もパワーワードで、定義はともかくとりあえず使いたくなる語なんだと感じました。
どちらも成果(目的)あっての手段なので、双方ともに実施したというアリバイを作ることが目的にならないよう取り組まないといけないなと感じました。